●被害への対処法(一般の方向け)

 クレジット過剰与信被害に遭った場合はどうすればよいか?
 通常の悪質商法(という言葉も変ですが)と共通する部分もありますが、
 過剰与信特有の問題もあります。

○契約書の整理、商品の保管

  多数の契約があると、自分でも状況が把握できなくなるし、
  専門家に相談するのもスムーズにいきません。
  まずは、契約書などをきちんと整理し、自分がどのような契約をしているのか把握することが必要です。

  後々の交渉や訴訟の証拠となるので、契約の際に渡されたパンフレットなどの資料も
  整理しておく必要があります。

  また、商品の保管も重要です。
  商品が残っていれば、解約が容易になる場合がありますし、
  クーリングオフその他の契約の取消しでも、商品は返還する必要があるので、
  商品はきちんと保管しておくことが必要です。 

○信用情報の取寄せ

  多数の契約があって、契約書を見ても整理が難しい場合、
  契約書を保管していない場合には、信用情報会社から、
  自分の信用情報を取寄せることが必要です。

  通常、信販会社は、
   株式会社シー・アイ・シー
   株式会社シー・シー・ビー
  の2つの信用情報機関を利用していますので、
  これらの会社から、情報を取寄せてください。
  (取寄せ方法は、各社のホームページに載っており、
   それほど難しいものではありません)。

  また、この資料は、「信販会社が、きちんと信用情報を活用すれば、
  過剰与信であることは十分分かったではないか」という、
  過剰与信防止義務違反を追及する際の資料としても重要です。

○クーリングオフ

  クーリングオフのことをご存じの方は多いと思いますが、
  @ 訪問販売やキャッチセールスなどの「特定商取引」について、
  A 契約から8日以内(マルチ商法については20日)であれば、
  B 無条件で契約を解除できる、という制度です。

  詳しくは、国民生活センターのホームページへ

  したがって、強引に商品を売りつけられた、
  支払えそうもないクレジットを組まされた、
  と思ったら、まずはクーリングオフをすべきです。

  また、契約から8日(20日)が過ぎていても、
  法律で定められたきちんとした契約書を交付していない場合には、
  クーリングオフの期間は進行しない、とされています。
  悪質販売店の契約書には、不備があることが多い
  (なぜなら、商品の名所や形式など、
  きちんと説明できるような商品を扱っていないことが多い)
  ので、クーリングオフ期間が経過していてもあきらめる必要はありません。

  ただ、店舗販売(キャッチセールスなど悪質な態様のものを除く)の場合などには、
  クーリングオフはできないとされており、
  この点を利用した悪質な販売方法もあるので注意が必要です。

○特定商取引法による取消し

  特定商取引法では、
  事業者が商品の内容や、
  商品の購入を必要とする事情(シロアリがいるなど)について、
  虚偽の事実を告げたり、不利益な事実を隠していたときには、
  (これを、不実の告知・不利益事実の不告知といいます)
  契約の取消しができるとされています。

  取消し期間は、消費者が虚偽に気づいた時から6か月です。
  (ただし、最長でも、契約から5年まで)。

  このように、クーリングオフよりも期間が長いため、
  契約から時間が経った後、だまされたことに気づいても、
  あきらめずに、専門家に相談することが必要です。

  ただし、クーリングオフと同様、店舗での販売のような場合には
  この制度も適用されない、という問題があります。

○消費者契約法による取消し

  消費者契約法でも、特定商取引法のような、
  不実の告知・不利益事実の不告知による取消しが認められています。

  細かく見ると、消費者契約法のほうが、
  若干条件が厳しいものになっているのですが、
  その代わり、店舗販売のような場合でも、適用が可能、という利点もあります。

  したがって、クーリングオフ、特定商取引法による救済が認められない場合でも、
  あきらめないことが重要です。

  ただし、消費者契約法による取消しについても、
  特定商取引法と同様、期間の制限があります。

○民法による取消し

  民法でも、契約に詐欺や錯誤があった場合は、
  契約は無効となる、と定めています。
  ただし、「効果があるといわれて買ったのに、効果がなかった」という場合に
  取消ができるかどうかは、上記の法律より若干条件は厳しくなっています。

  民法による無効や取消には、上記の法律のような期間の制限はありません。

○信販会社との関係

  以上の契約の取消手段は、悪質な販売を行った販売店との契約を取り消すものです。

  販売店との契約が取り消されたとしても、信販会社とのクレジット契約は無効にはならない、
  というのが現在の法制度です(販売契約と、クレジット契約は別の契約だから)。

  しかし、販売店との契約を取り消した場合でも、クレジットの支払い義務が残る、
  というのでは、販売店との契約取消を認めた意味がありません。

  このため、割賦販売法30条の4では、販売店との契約を取り消した場合、
  クレジット会社に対しても、以後のクレジット代金の支払いを拒絶することができる、
  という「抗弁の対抗」が認められています。

  これによって、少なくとも、それ以上の代金請求は拒絶することができます。

  ただし、問題は、すでに払ったクレジット代金の返還までは請求できない、
  とされていることです。

○過剰与信防止義務違反

  以上は、販売店との契約を取り消して、それを信販会社にも主張する、
  という方法でした。

  しかし、悪質な販売に協力していた信販会社にも責任があるのでは、
  という疑問があり、信販会社に直接責任を負わせる理論が考えられてきました。
  それが、以下で述べる過剰与信防止義務違反と、不適正与信防止義務違反です。

  クレジット契約が本人の支払い能力を超える過剰なものであった場合、
  割賦販売法38条の「過剰与信防止義務」の違反を主張して、
  クレジット代金の支払いを拒絶することが考えられrます。

  ただし、現時点では、過剰与信防止義務は、「努力義務」でしかなく、
  違反があっても、直ちに契約が無効となるわけではない、とされています。
  この点が、今回の法律改正の大きな争点です。

  ただ、これは、「割賦販売法38条に違反したことを直接の理由として、
  契約が無効になるわけではない」というだけのことです。

  民法は、「公の秩序や善良の風俗に違反するような契約は無効とする」と
  定めているので、過剰与信は、この民法の規定により無効となる余地はあります。

  この点について、簡易裁判所レベルですが、
  上記のような理由で、信販会社からの請求の何割かを無効とした例があります。

○不適正与信防止義務違反(加盟店管理義務違反)

  信販会社には、悪質商法にクレジットが利用されないよう注意し、
  この義務に違反するような不適正な与信をしてはならない、という義務です。

  法律の明文規定があるわけではありませんが、
  これまでも、クレジットが悪質な販売に利用されることは多発していました。
  このため、経済産業省は、昭和50年代から、繰り返し、
  業界に改善を求める通達を出してきました。
  この通達に、加盟店管理義務の具体的な内容が書かれています。
  (通達は、このページの下のほうにあります)

  法律がない以上、直ちに、これに違反したから契約が無効となるわけではありません。
  しかし、過剰与信防止義務違反と同様、悪質な場合には、
  民法の公序良俗違反などにあたる可能性はあるといえます。

○上記2つの義務違反の効果 

  過剰与信防止義務違反と、不適正与信防止義務違反は、
  確立した理論ではなく、これらの違反の効果がどうなるか、については、
  まだ不確定です。

  しかし、直接、信販会社の責任を負わせる理論であることから、
  違反が認められれば、クレジット契約そのものの無効、損害賠償という形で、
  すでに支払ったクレジット代金まで請求できるものと考えるべきです。

○現実の解決

  以上は、法律上の理論の問題でしたが、現実には、
  販売店が存続しているかどうか、が解決の要素になる場合があります。

  すなわち、販売店が存続している場合、信販会社は、
  信販会社から販売店に支払った代金の返還を受けて、
  契約をキャンセル扱いすることがあります。

  これは、信販会社にとっても、いつまでもトラブルを抱えているよりも、
  さっさと代金の返還を受けて、キャンセル扱いにしたほうが得であるためです。

  信販会社と販売店との間の加盟店契約には、
  そのような場合の処理を想定した条項も入っています。

  ただ、販売店が倒産していると、販売店→信販会社への返還、
  という処理ができないため、信販会社は、
  あくまでも、消費者に代金を請求してくることになります。

○まとめ

  以上のように、現状では、残念ながら、
  被害を確実に回復できる、という法制度は用意されていません。
  当会議は、このような現状を改めるための法改正を求めています。

  しかし、以上の制度・理論をフルに活用し、戦っていくことで、
  解決に至った例が多くあるのも事実です。
  あきらめずに戦っていくことが必要です。